家を建てるときは、ハウスメーカーや工務店に頼むのが普通と考えてる方が多いと思いますが、ぜひ、設計事務所に頼むという選択肢を検討してください。
設計事務所とは
設計事務所とは、建築士が所属する「建築士事務所」の俗称です。
設計事務所では建物を建てる工事そのものは行いません。
設計事務所の主な仕事は、建物の「設計」と「工事監理」です。
これらは建築士法できちんと定義があるのですが、ここでは実際に設計事務所が行う業務について簡単にご説明したいと思います。
設計では、
・建築主からの要望等のヒアリング
・建設地の測量や周辺の調査、法規制などの調査
・基本的な間取り計画やデザイン計画、資金計画
・建築主と打合せを重ね、詳細な意匠、構造、設備の図面を作成する実施設計
・建築確認申請、その他の法令による許可・協議・届出業務
工事監理では、
・施工業者への見積依頼、見積査定、業者選定に関する建築主への助言
・工事請負契約の立会い
・工事が設計通り行われているか確認、各種材料や施工の検査、施工者との打合せ
・建築主への工事監理状況の報告、打合せ
・竣工時の設計検査、建築主検査立会い
・完了検査申請、完了検査立会い、その他の法令による手続き業務や検査の立会い
・建物引渡し立会い、維持保全に関するアドバイスなど
おそらく想像できると思いますが、これらは建物を建てるに当たっておおよそ必要な業務であり、ハウスメーカーや工務店でも通常行われている業務です。
実は「設計」と「工事監理」は、都道府県知事に登録された設計事務所しか行うことが出来ません。つまり、ハウスメーカーや工務店も社内に設計事務所(一般的に社内の設計部や設計課)を持っているのです。
じゃあ設計事務所に頼む意味無くね?
いえ、ここからが本題です。
設計事務所には、ハウスメーカーや工務店(の内部の設計事務所)と比べて大きく2つの違いがあります。
1.デザイン力が違う
「でざいんか」ではなく「でざいんりょく」です。
ここで言うデザインは単なる「見た目」だけではなく、使い勝手などを考慮し建築主の生活に合った間取り空間をつくることや、様々な材料や設備から建築主にとってどれが適しているかの選択眼も含みます。
ハウスメーカーや工務店では、使用する材料や工法の選択肢が限られており、場合によっては間取りまで限定されていることもあり、建築主が選択できる範囲は限られています。
設計事務所なら、建築主の要望に添って、材料や工法を検討・提案し、細かい打合せをして決定していきます。その際、建築主およびご家族の生活パターンや好みをくみ取り、様々なご提案をいたします。建築主自身も気付いていなかった好みを発見できるかもしれません。
車に例えるなら、
ハウスメーカーや工務店は、メーカーを選び、車種を選び、ボディーカラーを選び、オプションを追加するような、選択肢の中から「選ぶ」作業であるのに対し、
設計事務所は、ボディ骨格や形状、エンジンの種類・排気量、タイヤのメーカーやサイズ、ホイールのデザイン、シートの堅さやポジション、操作スイッチの位置まで自分好みの車を「つくる」作業です。
2.施工者とは独立した立場で工事監理を行う
工事監理とは、工事が設計図通りに施工されているかどうかをチェックすることです。設計図は多くの打合せを元に作成された建築主の要望が詰まったものですから、もし設計図通り施工されていなかったとしたら、それは建築主の要望と違う建物ということになります。
前出の通り、ハウスメーカーや工務店の内部にも設計事務所があり工事監理を行わなければなりませんが、あくまで施工者側の人間ですので、どこまで厳格にチェックしているかは疑問です。(社内のパワーバランスによっては、「まぁいいか・・・」という気持ちが働かないとも限りません。)
設計事務所は施工者とは第三者にあたり、建築主の立場に立って工事監理を行います。設計図通りの材料が使われてなかったり、違う施工をしていた場合は施工者に是正を指示し、是正後の確認をし、その内容を建築主に報告します。また、設計図に表すことが出来ない細かな事項についての判断や決定を、施工者の都合が良い方法ではなく、建築主の立場に立って行います。ここが決定的に違います。
車に例えるなら、(またか・・・)
ハウスメーカーや工務店は、完成後の検査を自社で自主点検する。(不備や不正が発覚し、リコールになる?)
設計事務所は、完成後の検査を第三者機関(運輸局や検査機関)に依頼する。
ようなものでしょうか。
まずは重要な部分をご理解いただきたかったので、詳細を省いたり、ちょっと無理な例えを出しましたが、概要は分かっていただけたのではないかと思います。
設計事務所とハウスメーカー等との違いを主題としましたので、設計事務所のメリットを書けばハウスメーカー等のデメリットを書くような形になってしまいましたが、あくまで一般的にというだけで、全てのハウスメーカーや工務店がこうだというものではありません。
また、建築主によっては逆にメリットとなる場合もあります。例えば材料等の選択肢が少ないということは、検討する時間や手間が少なくなります。ひいては打合せ時間や回数を少なくすることができ、手間をかけずになるべく早く建てたいという方には良いのではないでしょうか。
時間をかけてでも自分だけの、個性ある、こだわりの家を建てたいという方は、
ぜひ、設計事務所を建物の総合プロデューサーととらえ、お気兼ねなくご相談いただきたいと思います。