建築物の設計は、設計事務所に所属する「建築士」が行います。建築士とはどういうものでしょうか?
建築士とは
建築士とは一般に、一級建築士、二級建築士、木造建築士の3つの資格・免許所有者の総称で、建築士法で以下のように定義されています。
建築士法
第2条 この法律で「建築士」とは、一級建築士、二級建築士及び木造建築士をいう。
2 この法律で「一級建築士」とは、国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。
3 この法律で「二級建築士」とは、都道府県知事の免許を受け、二級建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。
4 この法律で「木造建築士」とは、都道府県知事の免許を受け、木造建築士の名称を用いて、木造の建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。
一級、二級、木造の3つの種別の違いは、設計や工事監理をできる建築物の構造、規模、用途などの範囲の違いです。例えば木造の一戸建て住宅の場合、木造建築士は延床面積300㎡以下かつ2階建てまでしか設計できませんが、二級建築士なら延床面積1000㎡以下かつ3階建て(ただし、高さ13m又は軒高9m以下)まで設計できます。一級建築士なら制限はありません。(平易な説明のため省略しています。建築士法第3条~第3条の3参照。)
ちなみに、二級建築士と木造建築士は都道府県知事から免許を受けますが、その都道府県だけでしか仕事をできないわけではありません。日本全国どこでも建築士として仕事ができます。
建築士の役割と責務
建築士は、一般の人が行うことを禁止している行為を、特に行うことが許されている「行為独占資格」です。
医師などの一般的な業務独占資格は、無資格者がその行為を他人に行う場合は禁止されていますが、自分に行う場合は禁止されていません。例えば、自分の体調をみて「風邪かな?」と判断するのに医師免許は要りません。
しかし、行為独占資格は自分に対しての行為も無資格者は禁止されます。自分の家や店を無資格で設計できないのです。(例外あり)
建築物は、経済や生活の基盤となり、国民の生命や財産を保護する重要な役割があります。
設計と工事監理は、建築物の質の確保と向上を担い、その業務を独占的に行う建築士は大きな責任があります。そのため、建築士には建築基準法等の関連規定の知識やコンプライアンス意識、設計や工事監理を行う上で必要な知識や技能、建築物の構造や運用に対する安全意識などが求められ、建築士法にも「常に品位を保持し」「公正かつ誠実にその業務を行い」「建築士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」「設計及び工事監理に必要な知識及び技能の維持向上に努めなければならない。」などと、くどいくらいに記されています。
建築士は一度免許を取得すれば、更新もない永久資格ですが、設計及び工事監理に必要な知識及び技能の維持向上に努めなければならず、その一環として建築士事務所に所属する建築士は、3年に一度の定期講習を受講しなければなりません。
実際に業務を行うには、この講習以外に、毎年のように改定・施行・廃止される法令や基準、建築工法や建築材料・設備に関する新技術など、日々の情報収集・勉強が必要です。
「建築士は二級より一級の方が偉いの?」
それは違います。
武道や将棋などの「段・級」は技量のランクを表しますが、資格の「級」はその資格において可能な行為や業務の範囲の違いです。建築士であれば先の通り、設計や工事監理のできる建築物の構造・規模の範囲が違うだけです。
確かに学校や病院など規模の大きな建築物は一級建築士しか設計できませんが、一般的な2階建て木造住宅の設計ならどの建築士にでも依頼できます。
「どれでもいいなら、どうせなら、せっかくだから、木造や二級建築士よりも一級建築士に・・・」という気持ちが働くかもしれませんが、その考えは捨ててください。
一級建築士でも住宅の設計が不得手の人もいます。二級建築士だからこそ木造住宅に特化した知識を持つ人もいます。もちろんその逆もあります。自分の要望をきちんとくみ取り、理想とする家を設計してくれそうな建築士は誰か、ということの方がよっぽど重要です。
資格は個人に与えられるものです。
設計するのは資格ではなく、資格を持った個人です。
建築士個人を見てください。
うん、いいこと言った(笑)