設計事務所及び建築士のもうひとつの主たる業務である「工事監理」とは?
工事監理とは?
建築士法
第2条
第8項 この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。
つまり、「設計図面通りの施工がされているかどうかをチェックすること」です。
「それって現場監督(施工者)がやるから、わざわざ建築士(設計事務所)に頼まなくてもいいんじゃないの?」
現場監督(施工者)が行う「工事管理」と建築士が行う「工事監理」は、読み方は同じでも、その目的も内容も違います。
施工者が行う工事管理とは、
現場監督が当該建設工事を適正に実施するため、施工計画の作成、工程管理、品質管理その他技術上の管理および工事の施工に従事するものの技術上の指導監督を行うこと。(建設業法第5条の6第4項を要約)となっています。具体的には、安全を第一に、品質、コスト、工程、人員の配置等の工事全体の管理を行います。工事を行うには当然設計図書に依ることになりますので、今時、コスト最優先で設計図を無視するような施工者は少ないですが、それでも、利益を出さなければならない建設工事を円滑に進めることに重点が置かれているように思います。
対して建築士が行う工事監理は、設計図面通りであるか=建築主の要望通りであるか、法令に適合しているかどうかを重視しており、引いては施工者とは違う第三者の目線でもって品質や機能をチェックし、瑕疵や手抜き工事を防ぐことを目的としています。
工事監理はしなくてもいいのでは?
「施工者を信頼しているから、お金を払ってまで工事監理は必要ないよ。」
建築基準法では、建築士による設計が必要な建築物の工事では、建築士による工事監理が必要となっています。
これは建築主(施主)の義務です。
建築基準法
第5条の6
第4項 建築主は、第1項に規定する工事(建築士の設計が必要となる建築物の工事)をする場合においては、それぞれ建築士法・・・(略)・・・に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。
建築士による設計を必要としない建築物の場合(例えば、木造2階建ての延床面積100㎡以下の建物)なら、建築士による工事監理は必要ありません。
現場監督は施工者の立場として「工事管理」を行い、
建築士は工事監理者として、また建築主の代理者として「工事監理」を行います。
工事監理において、工事が設計図書通りに行われていないときは、施工者に対して指摘し、是正を求め、もし施工者がこれに応じない場合は建築主に報告します。
施工者にとって、建築士は「目の上のたんこぶ」のような構図が思い浮かぶかもしれませんが、別に敵対しているわけではありません。(少なくとも私は。)
現場では不可抗力によって設計図書通りできないことはよくあります。地面の下から何か出てきたとか、工具が入らなくて図面通りの取付方ができないとか、設計で指定の商品が廃番になったとか。
そのような場合、施工者から他の施工方法や代替商品を提案してもらったり、それが建築主の要望に添うものか、法的に問題ないか検討したり、両者で協力して問題解決をしていきます。
もちろん、瑕疵や手抜き工事は厳しく見逃しませんけどね。